向日葵



町中に蝉の声が響き渡る、8月。
少女には、ひとつの楽しみがあった。
夏休み前の終業式の日、校舎裏で見つけた小さな向日葵。
周囲を校舎の外壁と住宅で囲まれたその場所は日当たりが悪く、向日葵が育つにはお世辞にも良い場所と言えるものではなかった。
ようやく実ったであろう5つの花も、皆うなだれていた。

向日葵を見つけてから、少女は毎日、水を与えに学校へとやって来た。
学校が休みになっても、毎日のように朝早く登校しては、向日葵に水を与えた。
「ほら、お水だよ」
「せっかく咲いたんだから、頑張って上を向こうよ」
「明日も来るからね」
あまり信心深い方ではなかったが、それでも向日葵が元気になるのなら、と、しなだれた花に向かって毎日のように話しかけた。

少女が向日葵に会いに来るようになって、1週間が経とうとしていた。
向日葵は、少女の優しさに応えるかのように、日に日に鮮やかさを取り戻しつつあった。

そして今日も、水を撒き終えた少女は、いつものように如雨露(じょうろ)を校舎の壁に立てかけると、「明日、咲けたらいいね」と言い残し、家路についた。


向日葵が、咲いた。
自らに付けられたその名のとおり、真っ直ぐ太陽に向かい、眩しいまでの黄色い花びらで、精一杯にその光を全身に浴びる。
花の周りには、虫もいる。きっと来年も、この場所でまた咲くことが出来るだろう。

「せっかく咲いたんだから、頑張って上を向こうよ」

向日葵が、咲いた。
まるで、少女の言葉に答えるかのように。
向日葵が、咲いた。


少女が交通事故でこの世を去った、わずか2日後の出来事だった。



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これも学校の課題。下書き無し、ペンタブオンリー、使用ソフトはフォトショのみという環境で、ついに絵を描く事に成功しましたww
一つ前の『初雪』も含め、『季節を感じるイラスト』という課題だったのですが、2作とも一点透視で揃えてみました。
手前のヒマワリは、ネットで画像を探してきたのをトレースして描きました。背景とのクオリティのギャップがOTL

あと今回は、描いてる途中に閃いたショートストーリーなんかも掲載してみました。
めっちゃ短文ですが、こういった文章を書く事自体が久しぶりだったので、楽しく書けました。内容は暗いですがww